■ -6- 酸化コレステロールは動脈硬化や脂肪肝悪化の原因?
スーパーやコンビニで買った空揚げやフライを電子レンジで温め直して食卓ヘー。
いまや若い世代だけでなく、中高年の家庭などでも珍しくない光景だ。実はこんな食生活が、想像以上に動脈硬化や脂肪肝などを悪化させる原因になっているかもしれない。
食品中のコレステロールが酸化してできる「酸化コレステロール」か増え、様々な悪さをする可能性があるからだ。
摂取量は急増か
食品中のコレステロールの一部は調理、加工、保存の過程で化学的な働きが活発な活性化酸素にさらされたり、紫外線を受けたりして酸化する。コレステロールは細胞を作るのに不可欠な物質だが、血中の値が高くなりすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化の原因にもなる。それだけでなく、無意識のうちに酸化コレステロールも多くなり、体への負担を増す懸念があることがわかってきた。
コレステロールは食品に含まれるもののほかに、体内でHDL(高比重リポたんぱく質)にくっついてできた「善玉」と、LDL(低比重リポたんぱく質)にくっついた「悪玉」が知られている。酸化コレステロールは、もとになるこうしたコレステロールとはまったく別の物質だ。
酸化コレステロールは食材
を揚げたり焼いたり、干したりする際に生じる。食材に含まれるコレステロールの一割程度が酸化コレステロールになる。日本人のコレステロールの一日平均摂取量は、ファストフードの多用などを受けて急増している。
年代別にみると十代後半の男性で500mg、女性では400mgとf米国の平均の二倍近くにも達する。二十代でも米国を上回る勢いだ。これに伴い、酸化コレステロールの摂取量も増えていることか予想される。
米国ではコレステロールそのものよりもむしろ酸化コレステロールの方か動脈硬化に大きく関与しているのではないかとの報告もあり、注意を呼ぴかける動きが出てきた。
約百種類が知られ、このうち数種類は動脈硬化の血管壁でよく見られるという。
酸化コレステロールは「炎症反応を強めたり、動脈硬化やアレルギー反応を誘発したりしている可能性が高い」と明治大学の長田恭一准教授は指摘する。ラットなどを使った実験で、与えた酸化コレステロール自体が炎症を引き起こしたり体内のコレステロールの酸化を促進したりすることがわかってきた。
脂肪肝との関連性を指摘するのは九州大学の今泉勝己教授らのグループ。ラットに毎日少しずつ酸化コレステロールと脂肪分の多いラードを含んだ食事を与えたところ、酸化コレステロールが肝臓の中性脂肪合成を促し、脂肪肝が進んだ。同じ食事でも、普通のコレステロールではこうし
た現象は起きなかった。
人間に関するデータは不足しているが、「酸化コレステロールの摂取が好ましくない影響を及ぼす」(九州大学の佐藤匡央准教授)との認識は広まりつつある。血中コレステロールを下げる一部の薬は酸化コレステロールを減らす効果も示すが、日本ではそうした薬としては承認されていない。それでは、どのような対策をしたらよいのか。
まず、酸化コレステロールを多く含む食品を避ける。九州大学循臓器内科の江頭健輔准教授は三十一四十代の動脈硬化の患者に、酸化コレステロールが多
くなりがちなファストフードなど出来合いの食品をどれぐらい利用しているかを聞いて自覚を高める活動を始めた。
和食中心の食事でも一日平均2mg程度の酸化コレステロールの摂取につながるが、ファストフード中心よりも確実に減らせる。
緑黄色野菜で抑制
家庭での食品の扱いにも注意する。明治大学の長田准教授は二度揚げやてんぷら油の長期保存、電子レンジによる繰り返し・長時間加熱をやめるよう呼ぴかける。電子レンジで2分、6分、10分と加熱した実験では、10分の場合に酸化コレステロールが複数種類発生した。マヨネーズやバターは空気と触れないようにし、黄色や透明になったものは酸化が進んでいる可能性があるので利用を避ける。
酸化コレステロールの生成は食べ合わせの工夫によっても抑制できるという。食生活アドバイザーの宗像伸子氏は「コレステロールと同時に、ベータカロチンやビタミンC、ポリフェノールやカテキンといった抗酸化食品を槙極的にとるようにしてほしい」
と指摘する。ニンジンなど緑黄色野菜や緑茶などを意識してとり、バランスを心掛けるのが効果的だ。
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