■ コレステロール関連のニュース:コレステロール基準値の改定
安易な投薬治療につながると批判もあった総コレステロールを除外、「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールで評価する。食事や運動など生活習慣の改善を治療の中心にすることも明記した。日本動脈硬化学会は4月末、新しい診療指針を公表した。最も大きな変更点は総コレステロールを外したことだ。2002年に策定した今の基準では、総コレステロールが血液1dl当たり220mg以上を心筋梗塞や脳卒中につながる高高脂血症と診断している。これを動脈硬化を引き起こしやすいLDLコレステロールで評価するように改め、基準値を同140mgに設定した。専門医はLDLコレステロールで診断する。それを明確にしたと説明する。過剰診療の温床:現行基準では、成人のほぼ四分の一、中高年女性に限ると半数以上が「高脂血症」と診断され、二千万〜三千万人に上ると推定されている。だが総コレステロールには、動脈硬化を防ぐ「善玉」のHDLコレステロールも含まれる。日本人は全般的にHDLコレステロールの値が高い。善玉の多い人も高脂血症と診断されていた。50歳以上の女性はコレステロールが増えるが、心筋梗塞や脳卒中を起こす確率は男性の半分以下。動脈硬化学会は動脈硬化が引き起こす疾患をスクリーニング(選別)するのが目的だと説明するが、コレステロール値が高いというだけで投薬治療を勧める医師も多い。「過剰診療の温床になっている」との批判が上がっていた。新診療指針では「診断基準値は薬物治療の開始基準ではない」ことも明記する。まず食事や禁煙、運動など生活習慣の改善を3〜6ヵ月試みる。それでもLDLコレステロール値が改善しない場合に投薬治療を考えるようにする。投薬治療の具体的な開始基準は定めておらず、各医師の判断に委ねられる。高血圧や喫煙など動脈硬化を促す危険因子の数に応じてリスクを判断することが基本になる。例えば、糖尿病や脳梗塞を患っていれば動脈硬化による疾患が起きるリスクが高いと判断され、投薬治療が必要。同時に糖尿病などの危険因子を取り除く治療も不可欠だ。LDLコレステロール値だけが高く、ほかの危険因子がない人は投薬治療は基本的にしない。高血圧や喫煙のように危険因子が二つまでであれば、まずは生活習慣の改善で経過を見る。LDLコレステロールの基準値が依然として高すぎるという批判もある。LDLコレステロール値が120〜259mgの範囲にあるとき死亡率が最も低く、160mg以上になってもほとんど上昇しなかった。たばこを吸わない中年男性なら180mg、中年女性は190mgまでは問題ない。むしろ低い方が健康リスクは高い。コレステロール低下薬を使えば比較的簡単に基準値以下に下がるため、医師は投薬を勧めたがる。しかし、動脈硬化を引き起こす危険因子はたくさんあり、コレステロールはその一つにすぎない。複数の医師の意見を聞き最適な治療法を探すことが大切だ。
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